在宅透析患者の臨床工学技士というのは珍しいみたいで・・・(決していないわけではありません。何人かいらっしゃいます。私のように、もともとは健康で透析とは縁もゆかりもなかった健康状態だったのに、技士になってから透析になった人というのは居ないようですがw(技士兼透析患者という方のほとんどは、もともと透析患者で、透析を受けながら技士の仕事に興味を持って資格を取った、という人ばかりのようです。そりゃそうですよね、この仕事自体かなりマイナーだしw))

私の場合、技士になって20年の時に透析導入になりました。
そのほとんどをスタッフ側の視点を持って過ごしてきて、多分ほとんどの方は私と同じだと思いますが、「透析患者」というものを独特の厄介な患者、という色眼鏡で見てきた側の人間です。
そのため、透析導入になったときは、透析そのものの苦痛や先への不安、予後の悪さからの絶望感と同時に、「『あの』透析患者になっちゃった」ということも同じくらいショックで・・・えも言われぬ失望感、自己嫌悪に陥り、立ち直るのに相当の時間を要しました。(正確にはまだ立ち直ってはいません。)

そんな過程を経た透析患者兼技士というのも珍しいようで、チラホラと講演の依頼をいただくようになってきました。

在宅透析自体、多くの透析スタッフに偏見があります。
「儲からないのではないか」とか。
これは、単純に数字で比較した際、施設透析患者よりも診療報酬が低く設定されていることから受ける誤解のようですけどw
在宅透析は、まず、装置のレンタル料は丸々保険でペイできます。(診療報酬で、装置代が支給されます。透析装置を供給しているメーカーも、在宅透析目的のレンタルとした場合、最初からその保険点数内のレンタル料を提示してきますので、足が出ることは絶対になく、むしろ多少の利益が出るようになっています。)
また、診療報酬が低く設定されていますが、これは施設で透析を受ける時のように、スタッフの人件費が一切かからず、また、施設のベッドを塞がないで利益が計上される治療であるため、施設患者と単純比較すること自体そもそもの間違いです。
施設透析患者は、施設のベッド数、クール数の範囲内でしか保持できません。しかし在宅患者は、施設のベッドう数を満床にした状態でなお、何人でも保持できて報酬が入ってくる患者なのです。
そして、何より施設透析のような高額な初期投資が一切必要ではありません。(極端な話、透析室を持たなくても在宅透析患者を持つことはできます。)
ですから、単純に見た目だけ比較して「儲けが少ないからやめよう」というのは誤りです。

「在宅で頻回に透析したら足が攣ったりして大変なことになるにきまっている」(実際に某県の透析研究会で技士から質問があった事柄ですw)
そんなのあり得ませんw
実際、頻回透析による微量元素の喪失、アミノ酸の喪失は問題にならないかと言えばそんなことはありません。
(私自身、週7回透析のため常に低カリウム、低リンに気を使い、意識してそれらの摂取に努めるとともに、経口アミノ酸製剤(サプリだけどw)を摂取しています。)
また、過度のアルカローシスにより透析終了後の頭痛に悩まされることも少なくありません。
現在発売されている透析液が週3回4時間透析の患者を対象に作られているものである以上、それで頻回透析を行えば弊害が出るのは当たり前です。

でも、だからってそれでは頻回透析は「悪」なのでしょうか?
私はそうは思いません。
週3回4時間透析では、健腎者の半分しか生きられないことは統計が証明しています。
頻回透析にすることで、それが延長できる可能性が知られています。(腎移植患者と同じくらいの予後が期待できるとされています。)
頻回透析により喪失される栄養素は、経口摂取すればいい。
アルカローシスによる頭痛は、透析時間を短くしたりすることである程度解消できる。(私の場合は3時間までなら頭痛は出ません。これはあくまでカーボスターでの場合です。おそらく普通の酢酸透析液ではこのようなことは起きません。)

医療側の在宅透析への偏見が、在宅透析普及を阻んでいることも否めません。
こういう誤解を、何より私自身を見ていただくことで、そして患者さんでは答えられない専門的な分野への質問も技士である私ならある程度お答えすることができる、という点で、患者兼技士である私が講演をお受けしてお話しさせていただくことは有意義であると思っています。

現在私は透析業務から離れていますが(医療機器管理室勤務ですのでw)、こういう形で透析患者さんに貢献していけるのであれば大変うれしく思います。
拙いお話ですが、精一杯、私ならではのお話をしていけたらと思っています。

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